張込み (1958)

小説新潮所載の松本清張の同名小説の映画化で、兇悪犯を追うためにその元恋人を張込む刑事の姿を描いた社会派ミステリーの傑作。橋本忍が脚色、野村芳太郎が監督した。撮影は井上晴二。

監督:野村芳太郎
出演:大木実、高千穂ひづる、宮口精二、高峰秀子、田村高廣、松本克平、藤原釜足、浦辺粂子、多々良純、川口のぶ

張込み (1958)のストーリー

警視庁捜査第一課の下岡(宮口精二)と柚木(大木実)は、質屋殺しの共犯石井(田村高廣)を追って佐賀へ発った。主犯の自供によると、石井は兇行に使った拳銃を所持していて、三年前上京の時別れた女さだ子(高峰秀子)に会いたがっていた。さだ子は今は佐賀の銀行員横川の後妻になっていた。石井の立寄った形跡はまだなかった。両刑事はその家の前の木賃宿然とした旅館で張込みを開始した。さだ子はもの静かな女で、熱烈な恋愛の経験があるとは見えなかった。ただ、二十以上も年の離れた夫の妻になり、幸せそうには見えなかった。猛暑の中で昼夜の別なく張込みが続けられた。三日目。四日目。だが石井は現れなかった。柚木には肉体関係までありながら結婚に踏みきれずにいる弓子(高千穂ひづる)という女がいた。近頃二人の間は曖昧だった。柚木には下岡の妻の口ききで、風呂屋の娘との条件の良い結婚話が持ち上り、弓子の方には両親の問題があったからだ。一週間目。柚木が一人で見張っていた時、突然さだ子が裏口から外出した。あちこち探した末、やっと柚木は温泉場の森の中でさだ子と石井が楽しげに話し合っているのを発見した。彼が応援を待っていると、二人はいなくなった。再び探し当てた時、さだ子は石井に抱き着いていた。だが彼女は終いには彼に愛を誓い、彼と行動を共にするといった。しかし下岡刑事が到着し、石井はその温泉宿で逮捕された。この張込みで、柚木は女の悲しさを知らされ、弓子との結婚を決意した。「今日からやり直すんだよ」柚木は小声で石井を慰めた。それは自分へ言い聞かせる言葉でもあった。

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