放浪記 (1962)

黒澤明、小津安二郎と並ぶ日本映画の巨匠・成瀬巳喜男が林芙美子の自伝的小説を映画化。主演に大女優・高峰秀子を迎え、恋と文学に生きる女の人生を余すところなく描く。

監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子、田中絹代、宝田明、加東大介、小林桂樹、草笛光子、仲谷昇、伊藤雄之助、加藤武、文野朋子、多々良純

放浪記 (1962)のあらすじ

時は昭和初期。行商、女工、カフェの女給と職を転々とするふみ子(高峰秀子)。ある日、自分の書いた詩が劇作家・伊達(仲谷昇)の目にとまり、同人誌の仲間にさそわれる。やがて、2人は一緒に暮らすようになるが、それも長くは続かない。

放浪記 (1962)のストーリー

昭和の初期。林ふみ子は行商をしながら、母(田中絹代)と駄菓子屋の二階で暮らしていた。彼女が八歳の時から育てられた父は、九州から東京まで金を無心にくるような男だった。隣室に住む律気な印刷工安岡(加東大介)は不幸なふみ子に同情するが、彼女は彼の好意を斥けた。自分を捨てた初恋の男香取のことが忘れられないのだ。母を九州の父のもとへ発たせたふみ子は、カフェー「キリン」の女給になった。彼女の書いた詩を読んで、詩人兼劇作家の伊達(仲谷昇)は、同人雑誌の仲間に入るようすすめた。まもなく、ふみ子は本郷の伊達の下宿に移ったが彼の収入だけでは生活できず牛めし屋の女中になった。ところが、客扱いのことからクビになったふみ子は、下宿で日夏京子(草笛光子)が伊達にあてた手紙を発見した。新劇の女優で詩人の京子は、やがて伊達の下宿へ押しかけてきた。憤然と飛び出したふみ子は、新宿のカフェー「金の星」で働くことにした。その間にふみ子が新聞に発表した詩を高く評価したのは、「太平洋詩人」の福地(宝田明)、白坂(伊藤雄之助)、上野山(加藤武)らである。彼らは京子をつれてきて、ふみ子に女同士での出版をすすめ、今は伊達と別れた二人の女は、ふしぎなめぐり合わせの中で手を握り合った。こんなことからふみ子は福地と結婚したものの、貧乏と縁がきれない。ある日、新進作家の村野やす子(文野朋子)をつれて、白坂と京子がきた。そして、「女性芸術」でふみ子と京子の詩を選択のうえ、どちらか一篇を掲載すると告げた。安岡が金を持って訪ねてきたことから、福地はふみ子と安岡の仲を邪推した。ふみ子は再び婦らぬ決心で家を出た。その後、ふみ子の力作「放浪記」が「女性芸術」にとりあげられ、彼女は文壇に第一歩を踏み出した。そんなとき、彼女は画家の藤山武士(小林桂樹)を知った。「放浪記」出版記念会の日ふみ子の眼は感激の涙で濡れていた。林ふみ子という人生をのせた機関車は走り出した……。

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